もやもや病による脳出血で入院していた7歳の子ども。けいれん症状が続いたにもかかわらず適切な管理を受けられないまま、広範囲の脳梗塞を発症してしまいます。いったい病院側にはどんな過失があったのでしょうか。
頭痛を訴えた子どもが
脳梗塞を発症し亡くなった
事例の【要点】
頭痛を訴えて病院を受診した子どもが脳出血と診断され、入院による治療を受けるも症状は改善せず、激しいけいれんを起こすに至ります。後日、広範囲にわたる脳梗塞だったことが判明、残念ながら子どもは亡くなってしまい、遺族は病院が適切な管理を怠ったことが原因だと主張して訴訟を起こした事案です。本事案は6,600万円の賠償命令が下されています。
- 賠償金:6,600万円
名古屋地裁の判決ポイント
- 子どもが死亡したのは病院が適切な管理を怠ったからと主張
- 第三者医師の意見書が病院側の主張を覆す結果に
- 医師、看護師の注意義務違反が認められ勝訴
子ども/脳梗塞における
解決までの詳細
- 当時7歳だった女児は2011年10月18日午前9時頃から頭痛を訴え、同日16時頃に転倒、その後頭痛の増強と嘔吐、反応の低下がみられ病院に救急搬送。
- CT検査によって脳出血と診断、同日入院となり、その後放射線科の医師によって「もやもや病」による脳出血の疑いがあると診断。
- 翌日MRI検査とCT検査を実施したところ、新たに脳梗塞を発症していることがわかりました。
- 入院継続中だった同月23日17時頃より、女児には手足をばたつかせる、視線が合わない、ぐったり動かなくなるなどのけいれん状態が続きます。
- 翌24日深夜0時30分、看護師の依頼によって当直医が女児の診察を行うもけいれんは続き、その後は医師の診察を受けることなく朝を迎え、7時45分頃に脳神経外科の医師から抗けいれん薬を投与。
- 同日11時10分頃、CT検査によって新たに広範囲の脳梗塞、けいれん後脳症を発症していることが判明。
- 同日15時3分からの手術によって頭蓋内圧の減少が試みられましたが、女児は同月27日に自発呼吸停止、翌28日には脳死状態に陥り、残念ながら同月31日に亡くなってしまったのです。
原告側の主張と動き
死因は24日のCT検査で確認された広範囲な脳梗塞とされました。
遺族は、もやもや病で脳梗塞、脳出血を起こしていたので厳重な頭蓋内圧管理を行うべきだったこと、早期に脳出血による水頭症と診断して外科手術などを実施すべきだったこと、けいれん発作を起こす前に適切な治療を行うべきだったことなどを主張し、訴訟を起こします。
病院側は、CT画像上は脳室の拡大がみられず、水頭症を発症していなかったと主張、18日以降の症状は脳出血や脳梗塞に起因するもので水頭症の症状ではないと反論しました。しかし、けいれんが継続すると脳浮腫(脳のむくみ)や頭蓋内圧の亢進など非常に危険な状態に陥る可能性が大きくなります。
もやもや病である女児のケースであればなおさらで、直ちに抗けいれん薬を投与してCTもしくはMRI検査で脳の状態を確認、必要に応じて緊急手術等の措置を取るべきでした。また、けいれん発生時に看護師が確認しているにもかかわらず深夜まで当直医に報告せず、その当直医も速やかに抗けいれん薬を投与して主治医に報告すべきだったと考えられます。
裁判所の考えと判決
決定的だったのは、第三者である医師の意見書でした。それによると18日のCT画像で水頭症の所見がみられる、とのことだったのです。そして、緊急手術などの急性期医療を適切に実施していれば、長期的にも予後は悪くないという見解でした。
また、女児はもやもや病のため、わずかな頭蓋内圧の亢進でも症状が悪化しやすく、脳出血によって頭蓋内圧が亢進することを想定して管理すべきだったと指摘しました。裁判所もこの意見を採用し、けいれん発作の発生前も頭蓋内圧を管理すべき注意義務があったと判断。
病院側は、けいれん発作よりも先に広範囲な脳梗塞を発症していた可能性もあり、その場合は救命が不可能だったとも主張しましたが、それを裏付ける客観的な証拠はなく、女児の死亡と病院側の注意義務違反には因果関係があると認められたのです。

