無痛分娩の麻酔ミスで、母子が障害を負った事例

無痛分娩を希望した妊婦が麻酔ミスによる心肺停止で植物状態に。仮死状態で生まれてきた赤ちゃんも、数年で亡くなってしまうという痛ましい医療過誤の事案です。医師の注意義務違反が招いた悲劇といえるでしょう。

目次

無痛分娩の麻酔ミスで、
母子が障害を負った
事例の【要点】

無痛分娩の硬膜外麻酔から心肺停止状態に陥ってしまった原告女性。赤ちゃんも仮死状態で生まれ、母子ともに大きな障害を抱えることになってしまいました。

原因は担当医の麻酔ミスで過失を認めており、裁判所も注意義務違反を指摘しています。本事案では約3億円の賠償命令が下されました。

  • 賠償金:約3億円

京都地裁の判決ポイント

  • 無痛分娩の硬膜外麻酔ミスで妊産婦が心肺停止状態に
  • 赤ちゃんも仮死状態で出生、24時間介護で過ごした数年後に死亡
  • 医師の注意義務違反が全面的に認められる
参照元:最高裁判所HPより「平成28(ワ)4031 損害賠償請求事件 令和3年3月26日 京都地方裁判所」(PDF)( https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/280/090280_hanrei.pdf )

無痛分娩/障害における
解決までの詳細

  1. 妊娠39週だった原告女性は2012年11月5日、破水したため京都府京田辺市の産婦人科「ふるき産婦人科」を受診、そのまま分娩のため入院。
  2. 7日23時25分、原告は無痛分娩もしくは帝王切開のため分娩室に入室、同37分に担当医が背中から硬膜外側にカテーテルを挿入して麻酔薬を注入。
  3. 本来であれば、硬膜外麻酔の際は針とカテーテルを硬膜外腔に留めながら麻酔薬を分割注入することが義務づけられているにもかかわらず、担当医は針の先端をくも膜下腔(脊髄とくも膜の間にある、せき髄液で満たされた空間)まで到達させ、麻酔薬を一度に注入しました。
  4. 原告は全脊髄麻酔の状態(脊髄神経が麻痺した状態)となり、引き続き急性呼吸循環不全、心肺停止状態に。
  5. 救急車で基幹病院に搬送された原告は緊急帝王切開を受け、翌8日2時11分、仮死状態の女児を出産。
  6. しかし原告は心肺停止後脳症と診断され、1ヵ月後には遷延性意識障害、いわゆる植物状態と診断されました。

原告側の主張と動き

身体機能は安定しているものの高次脳機能については回復の見込みがなく、長期にわたって24時間介護が必要な状態が続くと考えられます。事実、2013年には身体障害者手帳1級に相当する両上肢機能障害、両下肢機能障害及び体幹機能障害の認定を受けています。

一方、生まれてきた女児はその日に新生児低酸素性虚血性脳症(赤ちゃんの脳に酸素や血液が行き渡らないことで起こる脳障害)と診断されました。

人工呼吸器の装着や経胃ろう十二指腸栄養の実施など、原告と同じく24時間介護が必要な状況でした。退院後は主に自宅での療養を続けていましたが、2018年12月頃からは排尿が困難となり、同月27日、敗血症性ショックによる播種性血管内凝固症候群(体内のあちこちで血液が固まると同時に、出血が止まらなくなる状態)により残念ながら亡くなっています。

裁判所の考えと判決

家族の主張は大きく2点、1つ目は前述のとおりカテーテルを硬膜外腔に留めた上で麻酔薬を分割注入せず、硬膜外針をくも膜下腔まで到達させて麻酔薬を一度に注入したこと、2つ目は万が一全脊髄麻酔の状態に陥った場合に速やかな呼吸確保、血圧回復ができるように人工呼吸器の準備や太い静脈ルートを確保しておく義務を怠ったこと、これらの過失が担当医にあったという事実です。

医院サイドは当初、請求棄却を求め争う姿勢を見せるも、訴訟中から注意義務違反については認め始めました。裁判所も担当医による注意義務違反と原告に生じた心肺停止後脳症、女児に生じた新生児低酸素性虚血性脳症との間には相当の因果関係があると認め、医院に約3億円の賠償を命じています。

同院では同様の硬膜外麻酔のミスが複数回発生しており、同じように母子が重度の後遺症を負って2件の損害賠償訴訟が起こされているそうです。

参照元:最高裁判所HPより「平成28(ワ)4031 損害賠償請求事件 令和3年3月26日 京都地方裁判所」(PDF)( https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/280/090280_hanrei.pdf )

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