ご家族にとって一大事である「病院を訴える」ということ。当サイトを監修している医療訴訟を扱う弁護士に、訴訟に対するスタンスや過失の認定、和解の意味など、裁判の前に知っておくとよいことを聞きました。
医療ミスでご家族の
未来を奪われた方へ

だからこそ伝えたい医療過誤の現実
井内弁護士「皆さん、はじめまして。弁護士法人ALG&Associatesの井内健雄です。
私は当法人に入所以来、一貫して医療関連の法務に携わりご相談に対応してきました。医療ミスで相談に来られる方々は、私たち人間にとって一番大切な“健康”を傷つけられています。脳外科領域の医療ミスではご家族が相談に来られる場合が多く、大切な人の未来を奪われたといっても過言ではない依頼者も少なくありません。
医療の特殊性として『医療ミスなのかどうかもよくわからない』『他の法律事務所で断られてしまった』など、依頼者の皆さんはそれぞれの事情を抱えておられます。私はそのような方々の力になれるよう、これまで多くの医療過誤事案に取り組んできました。
手がけてきた事件数(医療案件)は100件*を超え、現在進行中の案件も数十件に上ります。こうして経験を積んでいくことが、依頼者にとって一番妥当な解決策を模索するための近道だと考えています」

編集チームより
無念を晴らす
解決策ではありません
このページをご覧の皆さんは、大切なご家族のため、医師の見落としや手技ミス、判断遅れなど病院側に責任や過失を認めさせたいという気持ちでいっぱいかと思われます。ここでは、医療過誤事案に精通した井内弁護士のお話を通じて、「家族が今できること」を一緒に考えていきます。
過失の認定と和解金、
病院側の「謝罪」の意味
井内弁護士「最初に申し上げたいのは、訴訟は勝ち負けをはっきりさせることが本当の目的ではない、ということです。
医療ミスの疑いがある場合に、私たち弁護士が大切にしているのは『医師を敵視する』ことではなく『責任を負うべき医師には、きちんと責任を負ってもらう』という基本的なスタンスです。
私たちは過失があった医師や病院には再発防止に努めてほしいと願っていますが、それは多くの患者さんやご遺族も同じだと思います」
訴えてはいけない案件は
訴えない
井内弁護士「特に心しておかなければならないのは「訴えてはいけない案件は訴えない」ということです。
もちろん過失責任のある医師には責任を取ってもらわなければなりませんが、医療ミスを起こしたわけでもない医師をむやみに訴えることは医療崩壊にもつながります。
もし医療崩壊が起これば、最終的に大きな損害を被るのは私たち国民です。そして、無理に相手方の過失を追及しようとすると、裁判は泥沼の展開に向かいかねません」
相互理解からの和解が
望ましいことも
井内弁護士「目標は、結果として訴訟に至ってしまったとしても、お互いの主張を整理して尋問も行わず、1年後には双方が共通の認識を持って理解し合うこと。その理解をもって和解で終わるといった流れが、望ましいのではないでしょうか。
そこには、過失の認定と和解金に対する考え方について、原告であるご家族と病院側お互いの歩み寄りが必要です。
例えば、原告は和解金が300万円では納得できないが、それが500万円、1,000万円…なら納得できるとします。一方、病院側は“過失の認定を免れるなら”和解金が上がったとしても納得する場合があります。相手側とも裁判官とも「いい解決につながった」と共通認識が持てるのは、こういうケースです」
“謝罪”の解釈の違いで
解決が長引くケース
井内弁護士「反対に、相手方と認識がずれてしまうと、なかなか解決には至りません。
よくあるのが“謝罪”の解釈の違いです。「病院が謝罪するのは、過失を認めたからだ」と依頼者は思ってしまうのですが、患者さんがやむを得ず亡くなってしまったという結果に対する「申し訳ない」という意味であって、この場合の“謝罪”は医療ミスに対するものだと誤解してしまうことが少なくありません。
後になって病院から「法的責任を認めたわけではなく、道義的な責任に対する謝罪に過ぎません」と告げられたりすると、ますますお互いが歩み寄れなくなってしまいます。
主張が異なる場合でも同じ認識でいることは、本当に重要なことなのです」
訴訟において
「和解=負け」
ではありません
井内弁護士「これは医療訴訟に限ったことではありませんが、訴訟においては『和解=負け』ではないということを強く申し上げたいと思います。
和解とは妥協することだと考えているご家族も少なくないのですが、そうではありません。和解とは、納得した上での解決ができているということなのです。
例えば、和解を拒み続けた結果、訴訟で尋問にまで発展してしまうと、医師は保身のため原告側を傷つけるような証言をすることもあります。これは、ご家族にとって大きな精神的ダメージです。この時、当然ながら怒りの感情も沸き起こるため、尋問後に和解することは極めて困難になります」
時間と労力を加味して
納得できる結論へ導く
井内弁護士「もし和解を拒んでいても、裁判の結果が結局は和解の条件と同じだとしたらどうでしょうか?『何のための時間と労力だったのか。それなら1年前に和解しておけばよかった』という気持ちになることもあり得るのです。
依頼者の中には、『和解できずに時間がかかったけれど、言いたかったことを主張できたから良かった』と感じる方もいらっしゃいます。もちろん、何が正解かはご家族それぞれ異なりますが、それでも私は『和解=負け』ではないと考え、依頼者側の皆さんと一緒に最善の道を模索していきたいです」
あきらめず「セカンド
オピニオン」も検討を
井内弁護士「セカンドオピニオンと聞くと、患者さんが治療の選択肢を広げるために別の医師の意見を聞くことを想像する方も多いはずです。実は、弁護士にもセカンドオピニオンはあるのです。
私が所属する弁護士法人ALG & Associatesでも、セカンドオピニオンを求め相談に来所する方が増えています。
例えば、以下のような想いをもってご相談に来るケースが多いです」
- 一人の弁護士の意見が正しいとは限らない
- 自分に不利な意見しかもらえなかった
- 複数の弁護士から意見を聞いて検討したい
- 最初に相談した弁護士は自分と相性が合わないような気がする
- 地方に住んでいて、近所には医療事件に精通した弁護士が少ない
井内弁護士「もし他の法律事務所で『医療事件の解決は難しい』と言われたとしても、決してあきらめないでください。その日、病院で何があったのか?事実を知るまで誠心誠意向き合う弁護士に、あきらめずに相談してほしいです」
弁護士に抵抗感を覚えず、
まずは相談してほしい
井内弁護士「医療ミスに対して訴訟を起こすというのは、ご家族やご遺族にとって非常にハードルが高いことには違いありません。特に地方都市などで『病院といえば、そこしかない』というような状況では、依頼者本人や親族も普段から通院していたりするので、大ごとにしたくないという気持ちにもなるでしょう。
医師を訴えること、カルテ開示を請求することに抵抗を感じるのは私たち弁護士も十分に理解できます。
また、弁護士に対する敷居の高さを感じていらっしゃる方も多いようです。特に地方にお住まいの方は『わざわざ東京の弁護士先生に頼むなんて申し訳ない』とお考えになる向きもあります。
しかし、大切なのは冒頭で申し上げたとおり『責任を負うべき医師には、きちんと責任を負ってもらう』ということ。抵抗感を覚えずに、まずは相談していただきたいと思います。
訴訟を起こすこと自体に対する依頼者の不安な気持ちにも、しっかり寄り添って解決策を模索していくのが、私たち弁護士の仕事です」
「賠償請求」は
責任の重みを
数字で表すもの
井内弁護士「ご家族の中には、『お金がほしいわけではない』と訴訟に踏み切れない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、訴訟における賠償請求は単にお金のためだけではなく、賠償請求は責任の重みを数字で表すもの、そう考えるとどうでしょうか。
何より『医療ミスだったのかもしれない』という疑念を抱えたまま、この先ずっと過ごしていくのは精神的にも容易ではないはずです。そういう意味で、賠償請求は、ご家族の気持ちを整理するためのものという考え方もあります。ご家族の中でも意見が割れることがあるかもしれませんが、皆さんで今一度じっくり話し合ってみることをおすすめします」
弁護士法人
ALG&Associates
公式動画解説
(https://www.youtube.com/watch?v=MTcFRilYil8)
Zenken編集チーム:弁護士法人ALG&Associatesは動画チャンネルを開設しています。医療ミス事案や医療裁判で大切にすべきことなど、医療関連法務に精通している弁護士が一般の方にもわかりやすく解説しているコンテンツが公開されています。また、以下では同所所属の弁護士や全国の拠点情報などをまとめていますので、ぜひご参考にしてみてください。

